命を超えた絆。

 

これは命を失ってからも飼い主を助けた犬の物語です。

少し長文ですので、読み終えるのに3分くらいかかります。

 

その女性を、ここではナンシーと呼びます。彼女が灯台のある公園の岸辺を、歩いていたときのこと。

 

突然、白い袋が空から落ちてきた。
背後にそびえる崖沿いの道路から、投げ捨てられたことは明らかだった。そして袋が海面を打ち、海に沈む前に中からキャンキャンと苦しそうな悲鳴が聞こえた。

 

ナンシーは、ふだんは理性的でなにごとにも動じない、ブリティッシュコロンビア大学の生物学者だった。
といっても、思いやりや優しさに欠けているわけではない。そこで彼女は袋が沈んだ方向を目指して、数メートル水の中へ分け入った。

 

手をのばして、枕カバーか洗濯物人れのような袋を引っ張りあげた。袋の口は紐でしばってあり、中から溺れかけた生き物が水を吐き出すような、ゲホッゲホッという音が聞こえた。

 

ナンシーの科学者的な冷静さは、完全に吹き飛んだ。布にあいた小さな穴に指を突っ込んで思い切り引っ張った。袋が裂けて、白い毛が見えた。裂け目を開くと、白い顔にとがった耳、真っ黒な目と鼻がのぞいた。典型的なウエスト・ハイランド・テリアの顔である。

 

ナンシーは濡れた小犬を抱き上げ、よろけながら冷たい永をかきわけて岸までもどった。犬が温かな舌で彼女の顔をなめるのがわかった。ようやくなめらかな岩の上に下ろされた犬は、心からの感謝をあらわすように、いつまでも彼女の手をなめ続けた。

 

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ナンシーは、あらためて犬を調べてみた。それほど怪我はしておらず、年齢は一歳くらい、ウエスト・ハイランド・テリアにしては小柄だが、テリアらしい特徴をすべてそなえている。

 

布製の首輪に下がっている名札には、『エンジェル』と書かれていた。

 

ナンシーは、二階建てのタウンハウスに一人で住んでいた。研究室で夜遅くまで仕事を続ける科学者は、友だちや恋人を作りにくい。

 

それに男性が頭のいい高学歴の女性を敬遠しがちなことは、経験上わかっている。パートナーがいない暮らしに疲れたナンシーは、ペットを飼おうかと考えていた。

 

ナンシーは狂ったように彼女の指をなめ続け、ニンジン形の尻尾を振っている小さな犬をじっと見つめて、こう話しかけた。

『おうちがほしい? じゃあ、一緒にいらっしゃい!』

 

大の心が読める人には、そのときのエンジェルの返事が聞き取れたはずだ。

『守り神がほしい? ぼくがなってあげる!』

 

エンジェルはナンシーを守りぬこうと、即座に心を決めたようだった。彼女のテリトリーに入り込むものは、小さな白い騎士の警告の吠え声と、猛攻撃を覚悟しなくてはならなかった。

 

家にやってくる友だちや家族は、ナンシーが戸口に現れるまでさわがしく吠え立てるエンジェルに足止めを食わされた。

 

そしてナンシーが喜んで中に招じ入れた相手は、毛のむくむくした番兵に最高のもてなしを受け、その後の訪問でも歓迎すべき客として迎えられた。

 

エンジェルは、命を救ってくれたと主人を守るという任務に、忠実すぎるところもあった。なんであれ、新しいものや見慣れないものは、侵入者とみなされた。

 

ある日、ナンシーの家の前をジョギングで走りすぎる人を見て、エンジェルは吠えながら門の柵まで駆けていった。

 

柵には短いかんぬきがかけてあるだけだったので、エンジェルが体当たりすると、簡単にかんぬきがはずれた。白い犬は矢のように通りへ飛び出した。

 

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そして空を切ってランナーに飛びつき、そのランニングショーツに噛みついた。ナンシーも外へ駆けだして犬をおさえつけ、ランナーに詫びて家まできてもらった。

 

さいわいエンジェルが噛みついたのは布だけで、怪我はなかった。ランナーにはタオルを巻いてソファーで休んでいてもらい、ナンシーは急いでショーツを繕った。

 

エンジェルも新しい『お客』に慣れて愛嬌を振りまき、なでてほしいとせがみはじめた。

 

ランナーの名前はロバート、救急救命士だった。ナンシーと彼は話がはずみ、彼女がロバートを家まで送ったあと、二人は電話番号を交換した。

 

七か月後、二人の結婚式でエンジェルは、指輪を運ぶリングボーイ役を務めたナンシーの甥と並んでバージンロードを歩いた。

 

ロバートにとって、エンジェルが真夜中に発する警報(彼はそれを「泥棒ごっこ」と呼んだ)はうれしいものではなかった。

 

元気いっぱいの犬が、まずバルコニーに出て吠えたあと、ご主人に知らせようとベッドに飛び乗るので、雨の夜には寝具が泥だらけになるからだ。

 

ある晩、彼女はエンジェルを連れて姉の家を訪ね、ラブラドールーレトリーバーと遊ばせた。

その夜遅く、わが家の前までもどった彼女は車を停め、エンジェルにリードをつけた。家に入ろうとして通りを渡りかけたとき、突然男が暗闇から姿をあらわし、ナイフを振り回して彼女に向かって怒鳴った。

 

それを見てすかさずエンジェルが飛び出し、男の足に噛みついた。もみあいがはじまり、そのあいだにナンシーはバッグから催涙スプレーをとりだし、相手の顔に浴びせた。

 

男が苦痛のうめき声をあげるあいだ、彼女はエンジェルと家のドアまで走り、無事中に入った。エンジェルは軽い傷を負って血を流したが、ご主人に怪我はなかった。

 

ナンシーは彼を『私の守り神』と呼び、ロバートもそれに異論はなかった。考えてみれば、たとえ布団に泥足の跡がついても、命に別状があるわけではない。

 

歳月が流れても、ナンシーの守り神の勇気は衰えなかった。そしてある日、吠え声が消え、ナンシーは自分の白い小さな守り神の灰が入った小さな壷を、庭の片隅に埋めた。

 

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かたわらで彼女を慰めるロバートに、彼女はくり返しこう言った。

『この子はいつもそばにいて、私を守ってくれたわ』

ロバートはひそかに妻の悲しみに心を痛め、充分時間が経ったらまた犬を飼おうと考えた。

 

それからひと月も経たないころ、ナンシーは大きな吠え声で目を覚ました。それは、いつもエンジェルが立てていた警告の声にそっくりだった。

 

彼女はかたわらのロバートに声をかけようとして、その晩は彼が夜勤だったことを思い出した。吠え声があまりに激しいので、彼女は身を起こして声が聞こえる方向をたしかめようとした。

 

だが、そのとたん吐き気に襲われ、息が苦しくなった。

 

臓朧とした頭の中で、エンジェルがなにか危険を察知して、自分にそれを知らせようとしていることだけが思い浮かんだ。

 

ナンシーは、必死で起き上がった。息が苦しく、方向感覚が失われ、めまいがした。

 

そのとき、また吠え声がした。今度は玄関のほうからだった。彼女はベッドを抜け出し、狂ったような犬の声に導かれて、転びそうになりながら歩き続け、ふと気づくと玄関ドアの前にいた。

 

吠え声がドアの外から聞こえた。彼女はその声に導かれ、外に出ようとドアの錠前をまさぐった。だが、力がでない。呼吸が荒くなっているのが、自分でもわかった。それでもなんとかドアを開け、二歩踏み出したところでその場にくずおれた。

 

となりに住むアンドリューが、物音を聞きつけて窓から外をのぞいた。ナンシーが芝生に倒れているのを見てすぐに飛び出し、彼の妻が助けを呼んだ。警察と救急車が到着し、ナンシーの家でガスがもれだし有毒な煙が充満しているのを発見した。

 

偶然にも、到着した救急車にはロバートが乗っていた。酸素吸入でナンシーはすぐに回復した。

熟睡していた彼女がなにごともかく助かったのは、幸運としか言いようがない。

 

ロバートはつぶやいた。

『同じようなことが起きたとき、目が覚めない人は大勢いる』

 

ナンシーは彼の背にもたれたまま、言った。

『エンジェルが私を起こしてくれたの。馬鹿みたいに聞こえるでしょうけど、たしかに彼の吠え声だった。彼が私をドアまで連れていってくれたの。アンドリューも吠え声を聞いて、目を覚ましたのよ』

 

ロバートがかたわらのアンドリューを見上げると、彼もうなずいていた。

ロバートはもっと理屈のとおった説明を求めて、こう言った。

『たぶん、この近くでべつの犬が吠えていて、それで運良く君が目を覚ましたんじゃないかな』

 

ガスもれの危険がおさまり、わが家もようやくふつうの状態にもどった。

ロバートはナンシーにつき添って二階まで上がり、

『少し眠ったほうがいい、ぼくも一時間くらいでもどるからね』と声をかけた。

 

そしてベッドルームに入って明かりをつけたとき。

二人に見えたのは、ベッドの上の、泥だらけの足跡だった。

『犬があなたをこう変える』スタンレー・コレン著 より引用

 

我が家の警報装置はこの子です。

吠える声は、ものすごく凶悪で大音量!

防犯効果絶大です。

初めて来る宅配業者さんはドキドキしてます。

(ただしビビリなので誤作動多し。)

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でも、悪いヤツが来たら、きっと逃げます。

 

そんな警報装置のご褒美は。。。

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最後まで読んで下さり

ありがとうございました。

 

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