自分の犬は『テレビに夢中になる』と言う人もいれば、自分の犬は『テレビに興味を示さない』と言う人もいます。
犬がテレビ番組に注意を向けるかどうかには様々な原因が関係していますが、主な原因は、その犬の視覚能力なのです。
行動科学の研究者は、光の点滅する速さをどのくらいまで認識できるかによって、視覚能力、運動知覚能力がどのくらいかを測ります。
たとえば蛍光灯は変化のない光を継続して発しているように見えますが、じつは1秒間に120回という速さで点滅しています。
視覚能力の実験では、光の点滅が認識できなくなるところまで点滅速度を徐々に上げていきます。
平均的な人間の場合、1秒間に55回以上の点滅をすると、点滅とは見えず普通に光っているように見えます。
これは通常の蛍光灯の点滅速度の約半分です。
(1秒間の点滅サイクル数をヘルツと呼び、Hzと表記します。)
これと同じことを犬にさせて検査することが可能です。
平均すると、ビーグル犬は75Hzまでは点滅を見分けることができます。
(人間より50パーセント速くても見えることになります。)
犬のほうが人間よりちらつき(点滅)を認識する能力が高いという事実は、犬のほうが人間よりも速い動きを捉えられるというデータとも一致します。
そして、よく聞かれる質問の答えにも当てはまります。
なぜたいていの犬はテレビに映っているものに『たとえそれが犬であっても』興味を示さないのか?
その答えは、
ブラウン管式のテレビの場合、テレビの画面は1秒間に60回更新されています。これは人間の場合ですと、ちらつき感度の55Hzを超えているのでなめらかな映像として見えます。
しかし、犬は75Hzでもちらつきを感知できるので、犬にとってテレビの画面は高速で点滅しているように見え映像は本物には見えず、興味を示さないのでしょう。
最近の高解像度のデジタル画面は画像の更新速度がブラウン管よりずっと速いので、犬にとってもちらつきが少ないです。
そのことから、犬が自然関連の番組に登場する動物や、バラエティ番組に登場する犬や猫の動きに常に興味を示したりするという報告が増えているようです。
ところが、アニメに出てくる犬には反応しないと驚く人がいます。
これは犬がどれほど目が良く、どれほど正確に映像を解釈しているかの証なのです。
アニメの犬を見ると、犬はそれが動いていることは認識します。しかし、アニメの犬は生きた動物の動きを正確には再現していない。
だから犬には、テレビの中で何かが動いているのは見えるが、それが本物の動物ではなく興味がわかないと推測されています。
個々の犬の感覚にもよるのでしょうけれど、テレビの性能も大きく影響しているかと思われます。
『犬と人の生物学』スタンレー・コレン著
より引用
犬の視力は人間の測定方法では、0.5程度だそうですが、動く物などを認識する視力は別物なのでしょうね。
そうでなければ、かなりのスピードで動くものを捕らえるこの動きは説明できません。