昔むかし聖書の時代に、大洪水がやってくるからその前に箱船を作るようにと、神さまがノアに告げました。
『家族を箱船に乗せ、洪水から守りなさい。そして見つけられるかぎりあらゆる種の動物のつがいを集め、箱船に乗せなさい。』
最初にノアのもとに連れてこられたのが、つがいの犬でした。ノアは船全体を監督する役目を二頭に任せました。
犬は人間を愛し、人間の期待に応えることを喜びとしていたので、すぐさまその役目を引き受け、あたりを見回って警戒の目を光らせました。
犬たちが船内を巡回している時、船底の横腹に穴が開いて水が流れ込んでいるのを発見しました。
オス犬は鼻先をその穴に押し込み水の侵入を弱めて、メス犬をノアの元に走らせました。
メス犬の警報を受け取ったノアと息子たちが船底へ降りてくるまで、犬はどれくらい待たされたでしょう。
彼らが到着したころ、鼻で穴をふさいでいたオス犬は疲労困ぱいし、ほとんど意識をなくしていました。
そのあと全員が力をあわせて水をくみ出しても、船底が乾くまでには数日かかりました。
犬たちの迅速で英雄的な行動がなかったなら、船底に大量の水がたまり、船はその重みにたえかねて沈んでいたにちがいありません。
神はその一部始終を見て、犬たちの献身的で賢明な働きを誰も忘れてはならないと考えました。
犬たちの勇気と忍耐がなければ、地球上のすべての生き物が滅亡しかねなかった。そのことが永久に忘れられないようにと、神は濡れた鼻を犬にあたえたのです。
そのとき以来、『善良で勇敢』な犬はみな濡れた鼻をもつようになったのです。
お宅の犬は
『善良で勇敢』ですか?
それとも
『臆病な弱虫』ですか?
本来の犬の鼻が濡れている理由は、二つ。
一つは体温調節。
濡れた鼻から蒸発する水分で体温を下げる。
犬は水分を蒸発させられる部分が、足の裏と鼻だけ。それとべつに、口を
開けてハアハアすれば、舌から水分が蒸発する。
二つ目は臭いを嗅ぎやすくする。
濡れた鼻のほうが空中の物質を取り込みやすく、臭いを嗅ぎ分けるのに便利。一生懸命臭いを嗅どうとするとき、犬は自分の鼻をなめて湿らせ、臭いを集めやすくする。
ですね。